2月26日にエニウェトクに来てから何度も歩いたラグーン沿いの道、その道の北端から一本の桟橋が海に突き出ている。 この桟橋が指す美しい透明ブルーのグラデーションの海の向こうで、かつて核実験が行われて来た。
周囲80kmのこの環礁の北部が実験場だった。 ここで43回の大気圏内核実験が行われ、その後島民の帰島のため、降り積もった放射性降下物を島の土とともに削り取り、実験区域の東側ルニット島のクレーターに集めてコンクリートで封印した。
しかし40ある環礁の島で、使えるのはエニウェトク島と隣の二つの島に限られ、島の機能をつなぐ環礁の生活システムは戻る事が無かった。
島の生活を破壊し彼等が嫌う放射能汚染「ポイズン」は、四半世紀経った現在も彼らを拒否しながら、彼らと同居している。ルニットは立ち入り禁止のポイズンの島だ。
*実験写真:Redwing_Seminole_test(wikipediaより) 写真右上の雲に隠れてルニット島が見える
2004年、閏年の2月29日朝、エニウェトク唯一のコンクリート・スロープの浜から、船外エンジンつきボートがラグーンに降ろされた。いよいよルニット島へ出発だ。乗り込んだのは、エニウェトク自治政府で「ルニット訪問のリスクを了承する」という契約書にサインした中ハシはじめ3名と同行する警官2名、案内人1名の計6名。 そして100リットル分の飲料水、荷物は総て防水梱包して積み込んだ。
「リスクを理解して責任は問わない」という、サインしたあの書類が目に浮かぶが、動き始めた水面を眺めると、そんな不安は消え失せる。 太陽の光を受けた透明な水は、底との間でプルシアンやターコイズそしてエメラルド・ブルーとグリーンの間を無段階に変化するのだ!。
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